白内障手術を受けられる方へ

水晶体は瞳の奥にある透明な円盤状の器官で、眼の中でカメラのレンズと同じ働きをしている部分です。この水晶体という部分が濁って視力が低下する病気が白内障です。この白内障は視力低下をきたす病気のうちで最も多いものですが、手術によってほぼ元通りに治すことができます。 昔は濁った水晶体を取り除くだけでしたので術後に度の強いメガネが必ず必要となりましたが、現在は眼内レンズという小さいレンズが眼の中に入りますのでほぼ正常と変わらない見え方に治すことができます。眼内レンズを入れるようになって、白内障手術の治療効果が従来よりいっそう上がるようになりました。 眼内レンズとともに、白内障手術そのものも、大きく進歩してきました。たとえば、小さい傷口から超音波装置を使って水晶体を取り除き元々水晶体のあった位置に眼内レンズを固定する方法―超音波白内障手術―が行われるようになってきました。 わが国においては、1985年頃より眼内レンズ挿入術が、普及しだしましたが、1992年4月より眼内レンズが保険適応となり、今ではどなたにもこの手術の恩恵を受けていただけるようになりました。

白内障の見え方


平常の眼に入る光


平常の視覚


白内障に妨害された光


白内障の視覚

診察から術後まで

初診: 視力、眼圧などの基礎検査を行い、手術が必要かどうかを調べます。必要であれば、手術日を決めます。 検査: 角膜の形状や眼球の長さなどを測定し、手術に備えての詳しい検査を行います。 術前診察: 手術の約1週間前に、あなたに合う眼内レンズや術式を決定します。 手術: 10分少々で終了します。手術室に入ってからの所用時間は約30分程度です。 術後の定期検診: 手術翌日、2-3日後、1週間後、2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後に定期検診を行います。

術前検査

白内障手術を受けられるかたには、通常の眼科検査のほかに、角膜内皮細胞、角膜曲率、眼軸長の検査、手術に必要な血液検査をおこないます。また、散瞳して網膜や視神経に異常が無いか、手術によって視力が回復するかを確認します。 全身的な疾患があれば、手術できないことがあります。内科ですでに定期的に検診を受けておられるかたは、術前診察日までに報告書をもらってきて下さい。

眼内レンズの度数

眼内レンズはメガネやコンタクトと同じく色々な度数がありその人に合った度数を選びます。 眼内レンズの度数は角膜曲率および眼軸長より計算して求めますが、術後のピントの合う位置に多少のばらつきが生じます。また、眼内レンズを入れても調節力は回復しません。ですから、眼内レンズ挿入術を受けたあとでもメガネが必要になることが普通です。 使用する眼内レンズの度数を調整することにより、ピントの合う位置を遠くへも近くへももってゆくことができます。ピントの合う位置を遠くへもっていった場合、読書用のメガネが必要になり、ピントの合う位置を近くへ持っていった場合は逆に遠用メガネが必要になります。 ピントの合う位置は遠くへ合わすのが一般的ですが、もともと近視がある人や近くを見ることの多い人では、近くにもってゆくほうが具合が良いことがあります。メガネ無しで遠くが見えた方がよいのか(遠くにピントを合わせる)、近くが見えた方がよいのか(近くにピントを合わせる)をよく考えて、ピントを合わせて欲しい位置を決めて下さい。このことは術前に医師とよくご相談下さい。

手術の方法

水晶体前嚢の切開

黒目と白目のさかいを3-5mmくらい切開した後、水晶体の前の膜を直径約5mmの円形に取ります。

水晶体の中身の乳化吸引

超音波白内障乳化吸引装置を用いて、水晶体の中身を乳化し吸い出します。

眼内レンズの挿入

空になった水晶体嚢内に、直径6mmの眼内レンズを折りたたんで挿入します。

眼内レンズの固定

眼内レンズは、眼内レンズを支える脚により水晶体嚢内に固定されます。

手術の実際

手術は点眼麻酔で行いますので麻酔の注射は行いません。これは局部麻酔ですので、手術中も周囲の声は聞こえます。手術中に痛みはありませんが、顕微鏡の光のまぶしさや、器具のさわる感じはわかります。眼球運動は制限されていませんので、手術中は一点を見つめていただきます。まず、眼の周りを良く消毒し、黒目と白目のさかいを3mmくらい切開します。つぎに、水晶体の前の膜を円形にとりのぞき、そこから超音波白内障手術装置を用いて中身を吸い出します。あとは眼内レンズを挿入して手術は終了です。切開を加えてから終了まで10~15分くらいです。ここをクリックすると手術のビデオが見られます。 以上が超音波白内障手術の手順です。しかし、中にはこの方法が不可能な患者さんもおられます。その場合には、嚢外水晶体摘出術といわれる別の方法を行いますが、注射による麻酔が必要となり手術時間も長くなります。

手術の結果

患者さんにとってもっとも気になるのは、術後にどの程度視力が回復するかだと思います。白内障以外に眼の病気が無く、進行も中程度以下の白内障の場合は、ほぼ100%の確立で視力が正常に回復します。 あらゆる手術に共通することですが、手術の結果に最も大きな影響を与えるのは、術前の患者さんの状態です。例えば、水晶体の支えが著しく退化していると、通常の方法による水晶体摘出が困難で、正常な位置に眼内レンズを挿入することができません。また、白内障が進行しすぎると、水晶体の袋が極端に弱くなり、後に述べる後嚢破損の確率が高くなります。 手術に成功して、混濁した水晶体を眼内レンズに置き換えても、網膜、視神経、角膜など水晶体以外の部分に異常があれば、それほど視力は回復しません。そこで、白内障の程度、白内障以外の異常がないかなどを術前検査で詳しく慎重に診ておく必要があります。異常があればそのつど医師が説明いたします。

手術中のリスク

白内障手術は最も安全な手術の1つですが、全く危険がないとはいえません。可能性はかなり低いものですが、以下のようなリスクが起こりうることを予め知っておいていただきたいと思います。 〇ショック 点眼麻酔により危険はほぼ無くなりましたが、キシロカインなどの麻酔でショックがおきることがあります。当院では、麻酔科医師による立会いの下で手術を行いますので、万一の場合、直ちに然るべき処置をとります。救急医療施設へ搬送する場合もあります。 〇駆逐性出血 手術中に眼圧が下がることによる脈絡膜からの出血のことです。超音波白内障手術の導入以前は、駆逐性出血が原因で失明することがありましたが、超音波白内障手術の導入により頻度は少なくなり、駆逐性出血による失明もほとんどなくなりました。万一発生した場合、一旦手術を中止し、後日続行することになります。 〇後嚢破損 手術中に水晶体の袋が破れることです。後嚢破損を生じても眼内レンズの挿入は可能で、視力予後もおおむね良好ですが、視力の回復が遅れたり手術が2度にわたる場合があります。

術後の合併症

術後に新たに発生した病気を術後合併症と呼びます。頻度は少ないですが、万が一起こった場合には早期の治療が重要となります。このため、手術後は定期的な診察が必要です。医師の指示通り必ず受診して下さい。 〇眼内炎 手術中や術後の経過中に細菌が眼内に入って感染することを言います。感染は術後2~3日で発生することが多いようです。感染をおこすと、点滴注射や再手術が必要となり、発見が遅れれば、失明することがあります。感染予防のため、必ず、指示通りの点眼や内服を行って下さい。 〇類嚢胞黄斑浮腫 手術の炎症が長く残ると網膜の中心部に炎症の影響が及び視力回復が遅れることがあります。この予防のため、術後には炎症を抑える点眼薬を少なくとも2ヶ月程度続けていただく必要があります。 〇水疱性角膜症 角膜の内皮細胞が手術により減少して角膜混濁をおこすことがあります。角膜混濁をおこせば視力が低下します。手術前に角膜内皮細胞を測定して、水疱性角膜症の危険性について検討します。 〇後発白内障 眼内レンズ挿入術後しばらくして、残した水晶体の袋に混濁を生じて視力が低下してくることを後発白内障と呼びます。後発白内障による視力低下はヤグレーザーという治療で回復します。一旦ヤグレーザーを行うと、以後後発白内障をおこすことはありません。

手術前後のお願い

手術前 手術前に眼を清潔にしておかなければなりません。そのため、抗生物質の点眼薬を処方いたしますので、必ず手術予定の3日前より手術当日まで指示された通りに点眼を行って下さい。点眼は手術を予定している眼のみで結構です。

手術前日 1.入浴、洗髪をしておいて下さい。 2.睡眠は充分に取りましょう。

手術当日 1.朝食、昼食は普段通りお召し上がり下さい。朝食後に、指示通り、抗菌剤を内服して下さい。 2.普段服用している飲み薬は、当日も全て服用して下さい。 3.女性は当日お化粧をしないで下さい。 4.服装は前開きで、袖口がボタンで開閉できるものを着用して下さい。

手術終了後は次のことに注意して下さい。 1.食事は普段と同じように摂取していただいて結構です。 2.眼帯は翌日までそのままにしていただきます。点眼の必要はありません。 3.帰宅後眼が痛むことはほとんどありませんが、痛みを感じた時は痛み止めを服用して下さい。 4.入浴、洗顔、洗髪、運動(仕事)を禁じます。 5.指示された受診日に必ず受診して下さい。

手術翌日以降 1.点眼薬、内服薬は指示にしたがって下さい。 2.洗顔、洗髪は1週間禁止。(但し上向きでの洗髪は翌日から可能です。) 3.首から下の入浴は手術翌日からかまいません。 4.仕事(軽作業)は内容により違いますので医師の指示を受けて下さい。 5.メガネ処方は原則として屈折の値が落ち着いてから行います。 6.掃除などほこりのたつことは、1週間程控えて下さい。ゴルフ・園芸は2週間程なさらないで下さい。 7.その他、不明な点があれば医師にお尋ね下さい。

白内障 FAQ

手術当日は一人でも帰れますか? 当院で手術を受けられる方の5人に1人はお一人で手術を受けて帰られます。眼帯は片眼だけしかしませんし、普段お使いの眼鏡を眼帯の上からかけていただくことが出来ますのでゆっくりとお帰り頂けばまず問題はありません。しかし、手術を受けるということは精神的にもかなりストレスがかかりますので、どなたか一緒にお越しいただける方がいらっしゃればより安心です。 手術後、車の運転はいつから出来ますか? 眼の状態としては翌日からでも可能ですが、術前との見え方が極端に変わってしまいますので様子をみながら慎重に運転されることをお勧めします。 1週間洗顔、洗髪が出来ないのは気持ちが悪いのですが・・・ 水の中にはたくさんのばい菌がいますので、眼に水が入ると術後の感染症の原因になります。ご自身での洗顔、洗髪は1週間お控えください。 絞ったタオルで顔を拭いたり、美容室などで目に水が入らないように上向きで洗髪していただくのは翌日からでも可能です。 1週間おきに片眼ずつ手術する予定ですが、2週間洗顔、洗髪は出来ないのでしょうか? 両眼を1週間おきに手術される方の場合は手術前日に洗顔、洗髪をして頂いて結構です。もちろん手術当日の朝洗っていただいてもかまいません。 手術後眼帯はいつまで着けなければならないのですか? 手術の当日は眼帯をつけたままお過しいただき、翌日の朝診察の際に外します。 その後は特に眼帯をつけていただく必要はありません。 ホコリが気になる等ご心配な方には保護用のゴーグルをお貸しします。しばらく使用したいとご希望の方には販売もいたしております。 手術後に定期検診は必要ですか? はい。良好な術後経過を得るために必ず一定の間隔での診察が必要です。通常は手術翌日、翌々日、1週間後、2週間後、1ヶ月後、2ヵ月後・・・という診察間隔になりますのが術後の経過によって異なる場合がありますので医師の指示通りご来院ください。遠方からお越しの方で術後の通院が困難な場合はお近くの眼科をご紹介致します。お気軽にご相談ください。